坊守日記

『カラス』

この頃、カラスがあまりお寺の庭に来なくなった。どうして来なくなったか…実は私にはこころあたりがある。

ある日、玄関の扉を開けると鐘楼の屋根にいる二匹のカラスと目があった。「しっしっ!」といって追い払おうとした私を「チェッ」というような目をして知らん顔をするカラス。しばらくにらみ合っていた。

『からすって、いじわるなことをしたら、仕返しに来るらしいし、この場所が気に入られて、一族みんな来られても困るしどうしよう、、そう言えば、この頃よく屋根の上で鳴いてたね…』

などと思いめぐらした私は、ある行動にでることにした。自坊には雨の日にお参りする用の傘がある。その傘はジャンプ傘になっており、通常の傘よりもだいぶん大きく黒っぽい。私はその傘を両手に一本ずつ持った。そして突然。真横にがばっと左右同時に開き両足をそろえジャンプしながらからすに近づいてみたのだ。今まで人間だと思っていたものが、急に羽のような大きなものを広げ飛びながら近づいてきたのだから無理はない。カラスは、びっくりし慌てふためいて、飛び去ってしまった。それ以来、カラスをめったに見かけない。

カラスはやはり賢い、危険な場所はみんなに知らせるのだ。「かあ、かあ」と声は聞こえるが立ち寄らなくなった。